能登の特産品 珪藻土の切り出し七輪
公開日: : 名産品・特産品
見直される七輪
今時、街中に住む人達であれば、焼肉店以外で七輪を見かけることはあまり無いのではないかと思います。
炭火を使う道具ですから、気密性の高い現代の建築物では換気をちゃんとしないといけないし、そもそも家庭で炭を使うこと自体ほとんど無いでしょうから。
七輪はおもに炭を燃焼させる道具なんですが、炭火は炎ではなく遠赤外線で熱を伝えます。また七輪自体も熱せられると遠赤外線を発します。
このようにたっぷりと輻射される遠赤外線のおかげで、七輪で焼いた食材は炭火と食材の距離を上手く調節してやることで焦げる前に中までしっかり火が通り、 外はカリッと中はふっくらと仕上がります。
このような特徴から、焼肉店やホルモン焼きのお店でもあえてガスを使わず炭火焼にこだわるお店が増えていますし、アウトドアを楽しむ人達の中でもこだわり派の人達に人気が出てきています。
意外かも知れませんが、海外でも「Shichirin」や間違ってというかまぜこぜになったまま浸透してしまった「Hibachi」という名前で知られており、愛好家がいたりします。
また、3.11の震災後にはガスや電気といったインフラが使用できない状況で、製造業者が提供した七輪が避難所などで活躍したようです。
七輪の生産地と素材
かつて七輪は愛知県・香川県・石川県が主な生産地でしたが、需要の低下とともにだんだんと生産者が少なくなり、現在は愛知県と石川県に数社あるのみとなりました。
そもそも七厘は土を焼成して作るため、七輪の生産には良質の土が欠かせません。
その素材となるのが珪藻土です。
珪藻土とは、珪藻という藻類の殻の化石が堆積してできたものであり、その主成分である二酸化ケイ素(一般的にカタカナで「ケイ素」と表記されますが、漢字では「珪素」です)は、ガラスの主成分と同じです。
実は、この珪藻土の埋蔵量日本一は能登であり、能登半島の土の4分の3がこの珪藻土なのです。
能登の切り出し七輪
能登の七輪は、良質の珪藻土が豊富にあることから、珪藻土の塊を切り出して製品の形に削って焼成する「切り出し七輪」であることが特徴です。
職人さんがひとつひとつ手作業で削りだしていくわけですから、土を練ってプレス加工で作られる七輪と比べるとどうしても価格は高くなり、特に大きいものは高価になりがちですが、その分品質はしっかりと保たれています。
また、七輪と言えば昔ながらの朝顔形で円形のものがやはり何にでも使いやすいのですが、最近はナベやヤカンをかけることを必要とせず、食材を焼くことが目的で購入されることが多いせいか、四角い七輪に結構人気があるようで、切り出し七輪も色んなサイズや形状の四角い七輪が作られるようになりました。
七輪の特徴・長所・短所
炭火を使うには、七輪は本当に適した道具です。
実家では焼肉をするときに好んで使ったり、ガスコンロが他の料理で使用中の時に煮物のナベをかけたりと活躍していました。実家を離れてかなり経った現在は、キャンプやバーベキューで使うほか、自宅で使うこともあります。
そこで自分の経験から七輪の特徴や利点・欠点をまとめてみました。
まずは特徴です。
特徴
断熱性
珪藻土の元となる珪藻の殻は多孔性、つまり微細な穴がたくさん開いていて断熱性が高いため、珪藻土は保温材や壁土としても利用されてきました。七輪の場合もその断熱性のおかげで本体の開口部以外に熱が逃げにくく出来ています。
熱効率
七輪は熱せられるとそれ自体が遠赤外線を輻射するため、炭が発する遠赤外線に加えて七輪からの熱効果が加えられます。また、煙突効果によって熱が上へ向かうため、効率良く食材やナベ・ヤカンなどを熱することが出来ます。
空気取り入れ口
七輪には胴体部分の下の方に空気取り入れ口があるため、煙突効果で空気を取り入れながら炭を燃やすことが出来るので、酸素不足で炭火の勢いが弱まることがありません。
また、この空気取り入れ口の開け具合は調整できるので、火の着いた炭を出し入れしなくても、ある程度火力の調整が出来ます。
強度
七輪本体はさほど頑丈ではないので、雑に扱うと欠けたりひびが入ることがあります。簡単に割れたりしないように金属の帯で補強されていますが、ぶつけたり落としたりしないようにしましょう。
軽さ・重さ
珪藻土を焼成した素材は本来非常に軽いです。そのため小さい七輪は見た目以上に軽く感じますが、素材の強度の関係で、大きいものはどうしても肉厚になるため、見た目以上に重くなります。大は小をかねるという考えで七輪を選ぶとかえって使い勝手が悪くなるので要注意です。
一般的な円形の七輪3つを例として挙げておきます。
・卓上一人用小型:直径17cm高さ14.5cm、重さ1.1kg
・卓上用足つき標準サイズ:直径25cm×高さ17.5cmで重さ2.7kg
・卓上用足つきサイズ大:直径30cm×高さ17.5cmで重さ4.0kg
また、素材の特性上あまり乱暴に扱うと欠けたりひびが入ったりするので、粗雑に取り扱っていけません。
メンテナンス
基本的にメンテナンスフリーです。洗ってはいけません。脂汚れが気になる場合は、堅く絞った布で拭き取ります。布を濡らす時は、水よりお湯のほうが良いでしょう。とはいえ、決して使用前と同じ状態にはならないので、いっそほったらかしでもかまいません。昔の人はほったらかしでした。
ただし、空気取り入れ口の溝の部分の灰は取り除いておかないと動きが悪くなります。七輪を使っていて一番問題が出るのはこの部分です。動きが悪いまま放っておくと、そのうち動かなくなり、無理に動かそうとすると壊れるというのがよくあるパターンです。
次に特徴を踏まえたうえでの長所と短所のまとめです。
長所
- 外側は金属製のグリルほど熱くならない
- 少ない炭で十分な火力が得られる
- 火力調整が簡単
- 食材の中心まで早く熱が通る
- 五徳や網が無くてもナベやヤカンを火にかけられる
- 錆びない(本体のみ。金属ベルトは素材次第で錆びる可能性あり。)
- 歪まない
- キャンプやバーベキューで簡易炭つぼとして使える
- 蓋付きの七輪の場合は火消しつぼとして使える
- 災害時にも使用可能
短所
- 大人数向けは重い
- 屋内で使用する際は換気に注意
- 乱暴に扱えない
七輪の捨て方
七輪は、ちゃんと使っていればものすごく長持ちします。
しかし、割れたりして七輪を捨てる時が来たらどうすればいいのでしょうか。
昔は金属部分をはずしてから粉々にして地面に撒くという豪快な方法もありましたが、今時そんなことは誰もしないでしょう。一般的に粗大ごみか不燃物として扱われますが、自治体によって扱いが異なるため、お住まいの自治体に問い合わせてください。ホームページに記載している自治体もあります。
最後に
七輪に限らず電機・ガスを使わずに火や熱を利用できる道具と言うのは、普段使わなくてもいざと言う時にはあると助かります。
また、気が向いたときに一人用・二人用の七輪で色々焼いて食べるのもなかなかに良いものです。
これから暖かくなってくると、換気しても寒くはないですから。