松波飴-手作り少量生産の元祖じろあめ
公開日: :
最終更新日:2015/04/28 食べ物・飲み物
「じろあめ」って何?
奥能登地方には500年以上にわたって代々伝えられてきた飴があります。
この米と大麦から作る水あめ状の飴(米飴)のことを地元では「じろあめ」と呼んできました。
この飴は家で作るかよその家に頼んで作ってもらうものだったので、それゆえに一般的な商品として売り出されることはありませんでした。
今では金沢にある俵屋の商品「じろあめ」が有名ですが、俵屋は1830年創業の老舗とはいえ、奥能登のじろあめ作りの歴史からすればまだまだ「若い」と言えます。
俵屋のじろあめは、初代店主である次右衛門が乳児がいるのに母乳が出ない母親に、母乳代わりに与えられるように作ったと伝えられていますが、じろあめ自体は俵屋の創業より300年以上前から奥能登に存在していたわけです。
「じろあめ」という名前の由来
奥能登の方言では「柔らかい」ことを「じろい」と言いますから、「柔らかい飴=じろい・あめ→じろあめ」となったと思われます。
全国的には俵屋の「じろあめ」が有名ということもあって、名前の由来として金沢の方言で「柔らかい」ことを「じるい」と言うので、「柔らかい飴=じるい・あめ→じろあめ」という説明があったりしますが、能登の方言に比べるとしっくり来ません。なんだか後付けのような気がします。
というか、そもそも俵屋で売り出されるよりはるか昔から奥能登には「じろあめ」があったわけで、俵屋はじろあめが多くの人に行き渡るように商品化し、商品名は昔からの呼び名をそのまま使ったのではないかと思います。
ちなみに「じろあめ」や「じろ飴」は俵屋の登録商標ではありません。
「じろい」のニュアンスについて少々
「じろい」という方言は、私が子供の頃はよく聞く言葉だったのですが、今はお年寄りでもあまり使わなくなっているようです。
この「じろい」という表現は、ソフトという意味での柔らかさではなく、おもに「ゆるい・水分が多い」というような意味合いで使います。
つまり、「この布団はふわふわして柔らかい」を「この布団はふわふわしてじろい」とは言いません。「今日のカレーはなんだかいつもよりトロトロしてなくてゆるい」場合には、「今日のカレーはなんだかいつもよりじろい」と言います。おそらく金沢の方言「じるい」も同じニュアンスなのではないかと思います。
思い出の中の「じろあめ」
話を元に戻しましょう。
子供の頃、じろあめといえば、よその家で作ってもらうもので、浅い木桶に入っていました。
出来立ての飴は柔らかいのでスプーンですくって伸びたところをクルクル巻き取って食べられますが、木桶に入っているため保管時に密閉しないというか出来ないので、気温・室温にもよりますが、すぐに固くなってきます。
現在のように小瓶に入っていれば、湯せんにするなり出来ますが、当時のように木桶に入っているとそうはいきません。冬場、気温が下がって固くなった場合もそうでしたが、このような場合は鉄製の道具を使って表面を割り取って食べていました。
まず飴の表面に道具の先端を突き刺しますが、垂直にではなく浅めの角度で斜めに突き刺します。
次に道具の持ち手を引き起こすか引きおろすかしてテコの原理で割るわけですが、突き刺した角度が深いと割れません。
また、ほど良い角度で刺しても、刺し方が浅ければほんの少ししか割れません。
まだ小さかった頃は力が弱いので、固くなった飴の表面を割り取るのは結構難しい作業でした。
なかなか思った大きさに割れてくれませんでしたが、それでも飴を食べるための作業ですから、楽しかったですね。
また、この飴を食べるときは、いつも祖母に食べてもいいか聞いてから食べていたような記憶があります。
おそらく、いつも自宅にいたのが祖母だったことがおもな理由でしょうが、祖父や両親にお伺いを立てても「ばあちゃんに聞いてみろ。」と言われていたような気がします。
思えば飴作りを頼みに行くのはいつも祖母だったので、出来上がった飴の管理(ちょっと大げさですけど)も祖母の管轄だったのかも知れません。
奥能登のじろあめが「松波飴」として商品化へ
奥能登のじろあめですが、そもそもちゃんと商品化されてはいませんでした。
前に書いたとおり、各家で作ったり、飴を作っている家に頼んで作ってもらったりするものだったので、地元で必要な分を作って消費出来ていればそれで良かったわけです。
ところがここ数十年の間に作り手がどんどんいなくなり、地元でもなかなか入手しづらいものとなってしまいました。
そこで白羽の矢が立ったのが、私の実家でも飴作りをお願いしていた横井さんのおばあちゃんです。
まわりからの勧めもあったのだと思いますが、昔ながらの方法でじろあめを作り続けている横井のおばあちゃんに手作りのじろあめを商品化してもらうことで、ある程度安定して入手出来るようになりました。
横井商店の飴は、ブランディングのためか、その所在地から新たに「松波飴」とも呼ばれるようになりましたが、じろあめの商品名は「米飴(じろ飴)」です。
今や500年の伝統製法で作られるじろあめを入手できるのは、こちらの横井商店のみとなりました。
横井商店
http://yokoishoten.sakura.ne.jp/index/
石川県鳳珠郡能登町松波12-83-1
TEL 0768-72-0077
FAX 0768-72-2221
他にも横井商店の飴を取り扱っているところは、「松波飴」で検索すると見つかりやすいです。
Amazonでも扱っていますがちょっと言いたいことが
横井商店の飴はAmazonでも扱っています。
その中でコメントが付いているのは「米飴(じろ飴)大(500g)」なのですが、3件の評価のうち1件が星ひとつです。
その理由が「半沢直樹便乗商法」というもの。
一部抜粋しますが、
「もともと米飴、松波飴と言う名前で売っていたものを、半沢直樹ブームに便乗して、似た形状の飴なので、じろ飴の文字を入れたよう。紛らわしいわね。←黒崎の声」
とコメントされています。
繰り返しになりますが「じろあめ」は俵屋の商品名ではありますが、登録商標ではありません。横井商店は別に便乗したわけでもなく、元祖とも言うべき「じろあめ」を「米飴(じろ飴)」や「松波飴」として売っているわけで、中身は伝統製法の元祖じろあめです。
このコメントを残した方が、想像で一方的に「便乗商法」と書き込んでいますが、半沢直樹ブームというものが来るよりはるか前から横井商店ではじろあめを作ってきています。
本業が別にあるにもかかわらず伝統を残すため・周りの人達のために飴作りを続けてこられた横井商店の皆さんには、心無いコメントにめげず、これからも精魂込めたじろあめを作り続けて頂ければ幸いです。
そして、500年の伝統を誇るじろあめ作りが途絶える事無く地域に受け継がれていくことを願います。
最後に。
じろあめをそのまま飴として楽しむ方(料理・お菓子作り・飲み物に使う予定がない方)は、小さめのビンを買うほうが無難です。
余りそうなら、料理や飲物に砂糖の代わりに使ってみてください。
砂糖とは違った優しい甘みとコクを味わえますので。
※アイキャッチ画像は横井商店のサイトからお借りしました。
広告
関連記事
「いちご狩り」って始まるの早くない?
そういえばいちご狩りのシーズンがはじまってるんだなぁ、と思ってちょっと調べてみました。関東の
天然・手摘みの希少品 珠洲の岩海苔
同じ能登の岩海苔でも、輪島の方では海苔畑で収穫しているようですが、珠洲の岩海苔は人口の海苔畑ではなく
さよりは低脂肪・高蛋白+ビタミンC。そして甘い。
そろそろ、さよりが旬の時期になりました。さよりは一般的に早春の魚というイメージがあります。